佐藤忠良 少年の美術(中学校教科書) [芸術]
少年の美術
美術を学ぶ人へ
佐藤忠良
美術を学ぶ前に、私が日頃思っていることを、みなさんにお話しします。というのは、みなさんは、自分のすることの意味ーなぜ美術を学ぶのかという意味を、きっと知りたがっているだろうと思うからです。私が考えてほしいというのは、科学と芸術の違いと、その関係についてです。(中略)科学というのは、だれもがそうだと認められるものです。科学は、理科と数学のように自然科学と呼ばれるものだけではありません。歴史や地理のように社会科学と呼ばれるものもあります。これらの科学をもとに発達した科学技術が、私たちの日常生活の環境を変えていきます。ただ、私たちの生活は、事実を知るだけでは成り立ちません。好きだとかきらいだとか、美しいとかみにくいとか、ものにたいして感ずる心があります。これは、だれもが同じに感ずるものではありません。しかし、こういった感ずる心は、人間が生きているのにとても大切なものです。だれもが認める知識と同じに、どうしても必要なものです。詩や音楽や美術や演劇ー芸術はこうした心が生み出したものだと言えるでしょう。この芸術というものは、科学技術と違って環境を変えることはできないものです。しかし、その環境に対する心を変えることはできるのです。詩や絵に感動した心は、環境にふりまわされるのではなく、自主的に環境に対面できるようになるのです。(中略)人間が生きるためには知ることが大切です。同じように、感ずることが大事です。私は、みなさんの一人一人に、ほんとうの喜び、悲しみ、怒りがどんなものなのかわかる人間になってもらいたいのです。美術をしんけんに学んでください。しんけんに学ばないと、感ずる心は育たないのです。
不来方の
空の碧さに
夏の草
初島
by churaumi (2013-06-16 21:35)
淡海より
叡山仰ぎ
麻の花
初島
by churaumi (2013-06-16 21:37)
青空に
白球を追う
夏予選
by churaumi (2013-06-16 21:43)