さんさく [散策]
鷹峯徳川家康より拝領したこの地に五十七才の光悦はその文化を創り上げている。一門知友とともに法華の寺院を中心にそれぞれに別邸を構えさせた村を開拓風流三昧の暮らしを始める。里山とは少し趣を異にするように思える。往時にここにあれば本物の文化と接することができたであろう。文化を創造する人間とふれあうことができたであろう。この地を歩きこの地の人となりに接する。それが農民であれ商人であれ役人であれ、それは鷹峯がはぐくんできた文化の継承者である。生活の中に光悦の芸術が常態化しているからであろう。茶碗1個が語るものはおおくはなかろう。作陶による人となりを見ることは僅かであろう。また無機物が与えるものは一面であろうか。芸術品が茶碗1個が命を持つときはその茶碗が有るべき人の手の中にあるときなのだろう。伝来という言葉の持ついぎはおおきい。国宝の中に人間国宝がある。我々は等しく国宝に、人間国宝に接する機会がある。常に想うことは、沿える人でありたいと思うことである。優れた文化に接する機会があるだけでもなんと有り難いことであろう。しっかりと五感で触れながら、自らの音も出さず過ぎることがこの文化への気遣いであろうか。今日の一日を感謝いたします。
春雨に
光悦垣の
濡れそぼる
by churaumi (2015-04-23 21:53)